六十余州名所図会 ・ 53
紀伊 和歌之浦
ろくじゅうよしゅうめいしょずえ きい わかのうら
Famous Places in the Sixty-odd Provinces: Kii Province: Wakanoura Bay
作品に ついて
画面の上部では、白い鶴と青みを帯びた鶴が大きく翼を広げて飛び、その下にも小さな鶴が何羽か舞っています。中ほどには緑の岬と島々が入り江を囲み、中央の小島には塔が見えます。手前には波立つ海と、岸辺に生える若い松があります。
鶴を大きく手前に置き、遠くの島や山を小さく描いた大胆な遠近法の図です。海の藍、島の緑、水平線の赤いぼかしが層をなし、鶴の白さを引き立てています。
和歌浦は奈良時代から歌に詠まれた歌枕で、山部赤人の「若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴鳴き渡る」で知られます。鶴はこの歌を踏まえたものと考えられ、島の塔は江戸時代に建てられた妹背山の多宝塔とされます。
安政2年(1855年)の刊行で、揃物では長門の次に置かれています。東京国立博物館や国立国会図書館にも同じ構図の刷りがあります。鳥を前景に大きく描く構図は、のちの「名所江戸百景」の「深川洲崎十万坪」の鷲にも通じる、広重晩年の工夫です。
描かれた 場所の 今
和歌の浦は2010年に国の名勝に指定され、妹背山の海禅院多宝塔や紀州東照宮、玉津島神社などが点在します。干潟の広がる片男波の浜とあわせ、万葉の時代から歌に詠まれてきた景色を今も感じられる海辺の景勝地です。
どこで 見られる?
展示は時期によって入れ替わります。訪れる前に、各館の展示情報を確かめてください。
この作品を所蔵する館
- 東京国立博物館所蔵館の作品ページ(新しいタブで開きます)
東京都・台東区 作品番号 A-12499-246
海外の所蔵館
- シカゴ美術館所蔵館の作品ページ(新しいタブで開きます)
シカゴ 作品番号 1965.995
出典・参考
- Art Institute of Chicago: Kii Province: Wakanoura Bay (Kii, Wakanoura)(新しいタブで開きます)(2026-10-19 確認)
- ColBase(東京国立博物館): 六十余州名所図会 紀伊 和歌之浦(新しいタブで開きます)(2026-10-19 確認)
- 国立国会図書館デジタルコレクション: 六十余州名所図会 紀伊 和哥之浦(新しいタブで開きます)(2026-10-19 確認)
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