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旅みやげ第一集 陸奥 蔦温泉

たびみやげだいいっしゅう むつ つたおんせん

Tsuta Hot Spring, Mutsu (Souvenirs of Travel I)

川瀬巴水の連作「旅みやげ第一集」の一枚で、八甲田山麓の一軒宿・蔦温泉の雨の夜を描いた木版画です。闇の中に灯る窓の明かりが、旅先の夜の静けさを伝えます。

制作年
1919年(大正8年)
技法・形式
木版画(浮世絵)
描かれた場所
蔦温泉(青森県)

作品について

画面全体が、青緑から黒に沈む夜の色で覆われています。中央には大きな屋根の宿が影のように建ち、二つの窓だけが黄色く灯っています。宿の背後には森の木々が黒い塊となって立ち上がり、画面には細い雨の線が一面に摺られています。手前には水の流れか湿った草地のような部分が広がり、左下に「陸奥……蔦温泉」の題、右下に年記と署名、印があります。

本作は1919年(大正8年)の作で、巴水はこの年に東北を訪ね、十和田湖や蔦温泉を写生したとされます。「旅みやげ第一集」には蔦温泉のほか、近くの蔦沼や十和田湖の千丈幕を描いた図も含まれています。人の姿を描かず、灯りと雨だけで宿の気配を伝えるこの図は、のちに「旅情の版画家」と呼ばれる巴水の持ち味がよく表れた一枚とされます。

夜や雨、雪といった天候や時刻の表現は、巴水の風景版画の大きな魅力です。本作では、雨の線を彫りと摺りで表し、湿った空気までも感じさせています。

東京国立博物館と東京国立近代美術館がこの図を所蔵しており、海外ではブルックリン美術館なども同じ図を持っています。

描かれた場所の今

蔦温泉は青森県十和田市の八甲田山の東麓にある温泉で、今も一軒宿の旅館が営業しています。周囲のブナの森には蔦沼などの沼が点在し、散策路が整えられています。明治・大正の文人・大町桂月がこの地を愛し、宿の近くに墓があります。

どこで見られる?

展示は時期によって入れ替わります。訪れる前に、各館の展示情報を確かめてください。

この作品を所蔵する館

出典・参考

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